どうして日曜日の夜だけは見えたのか、よくわかりません。とても素晴らしいコンサートだったので、
神経がいつもより敏感になっていたのかもしれません。今までは見ているようで見ていなかった、そんな光景がありました。
コンサートの最後の最後、メンバーが一人、また一人とステージから姿を消して行って、そして本当に最後、
1番最後まで残っている人。その人が、客席に向かって大きく手を振っていました。




「ありがとう〜!」とマイクで言いながら手を振っていたその人は、次にはマイクを持っている手も振っていました。
その姿が正面のスクリーンに映し出された時、僕は思わず息を飲みました。
足を負傷し、黒いサポーターらしき物を巻いているその人が、あらん限りの力で「ありがとう」と叫んでいる。
両手を振っているんだから、マイクを口から離しているんだから、「ありがとう」という言葉は当然聞こえはしません。
でも、聞こえないはずがない。
その表情を見れば、言葉など付属にすぎない。力を振り絞って発したような笑顔は、未だに僕の頭の中にあります。




思えばこの人は、いつもそうやって手を振り、声を上げていたのかもしれません。
あの日、からずっとそうだったのかもしれない。
もしそうなら、ありがとう、と言わなければならないのはそっちよりむしろこっちです。
なのに、力を振り絞って闘い、そしてモーニング娘。を引っ張ってきた人に対して、僕は?
「ありがとう」と言っていただろうか?多分言っていなかったんでしょう。
言っていれば、こんなに自分を情けなくは思わない。




だから明日のコンサートは、「ありがとう」という気持ちを込めて臨みたいと思います。
でもそう意識しなくても、ステージに立つ彼女を見れば自然とそんな気持ちが湧いてくるはず。
そして、『男友達』を歌う姿を見て僕はあらためて感じるんでしょう。
吉澤ひとみって、なんて綺麗な人なんだろう、って。