風景

泣きそうな顔で
君は僕の顔を見る
波の上に跪きながら



「左のピアスを落とした」



そんな波打ち際で落としたら
多分もう見つからない
波がさらっていったか
貝殻がそっと包み込んで
砂の中に逃げていったか



君と僕は趣味があまりにも違うから
何かを上げても困っているのは
ふとしたしぐさでわかる


自分の色を変えない君が好きだから
僕は君の色を必死で探した



そのピアスだけは
心から喜んでくれた
それは、ふとしたしぐさでわかる



例えば今の君の
ピアスを落とした時の顔



「大丈夫だよ」と言ってみたところで
君はしばらくは悔やみ続けるんだろう



そうだ
その右のピアスを
俺にくれないか



君の色のピアスを
俺はまた必死で探すだろう



そして、必ず見つけて見せる



波打ち際で跪く君
泣きそうな顔
右側だけに光るピアス



そのかけがえのない風景ごと
俺にくれないか