コンサートで高橋愛を見た感想を書きたいと思います。土曜日には福井で昼と夜に、日曜日はびわ湖で夜だけ参加しました。
今日の感想は福井の夜を骨子として、その他のコンサートで気づいたことはそこに足していく、という形にします。
あくまで『レポート』というより感想ですので客観性に著しく欠けますし、最後の方になるとコンサートそっちのけでキモ文書いてる
と思いますが、「ああ、このタコ坊主はコンサートをこう見て感動して、ついでに感極まって話脱線させてんだな」くらいに
軽く読んでもらえたら嬉しいです。曲は、印象に残った曲だけをピックアップして感想を書きます。
ネタバレを含みますのでご注意ください。













最初の曲は『THEマンパワー』。僕はこの曲で気になっている部分がありました。ラストのあたり、愛ちゃんが最後に
「素晴らしいー!」と叫ぶあの部分です。テレビで見る限りでは、どうしても不安定になりがちだな、と感じていました。
あれを安定してやれというのも難しい話だとは思いますが、テレビではガナりに失敗して声が裏返ったり、逆にファルセットで
通したりしていた記憶があります。この部分、愛ちゃんはどのあたりに落とし所を見つけるんだろう。そこに興味がありました。



福井の昼夜、滋賀の夜ともに、まずファルセットで「素晴らしい」と歌いだして、そこからガナリに持って行く、という歌い方に
なっていました。
ファルセットだけで通してしまうとどうしても曲調に対してパワー不足な印象を受けてしまうし、逆にガナリだけだと不安定に
なってしまう。でも今回のような歌い方なら安定していて、しかも力強く終わることができる。
すごく好きな歌い方です。3公演見てきて「今回、愛ちゃん、ここ、どうかな・・・」みたいに気にする必要は全くなくなっていました。




去年の秋のコンサートでの『ここにいるぜぇ!』でも感じたことでしたが、テレビで不安定に感じた部分がライブでは全くなくなっていたり、
ライブを通して安定した歌唱になっていったり、それは高橋愛が常に自分の歌唱に対して厳しい目を持っている証左だと思うんですが、
ただ今回はなんだかそれだけでもないような気がしているんです。いや、その厳しい目が更なる目を結んでいるのかもしれませんが、
歌にしろ表情にしろ、去年の秋のコンサートより深い域に達しているような気がしてならない。そう思わせる曲が僕には多いんです。




『独占欲』。僕はこの曲ですこし驚いた愛ちゃんの表情があります。
福井の夜公演、僕は8列目の右でした。右といっても、思い切り右です。真横から見てるくらいの勢いで右でした。
この曲のラスト部分は愛ちゃんが歌います。他のメンバーがセンターで歌っているのを、そのメンバーの真後ろで待っている
形になっていました。
この待っている時の表情が見えたんですが、目を頻繁に瞬きさせて少しうつむいて、緊張しているのか、
テンションを高めていっているのか、
その回数の多い瞬きが今までみたことのない愛ちゃんのような気がして、何故かドキッとしました。
そして自分の歌う段になって自分がステージの前に躍り出た時の表情とのギャップ。物凄かった。静を一気にひっくり返して
動にもっていくようなギャップでした。ラスト部分を歌っている時の愛ちゃんはもはや愛ちゃんではありません。
この部分の愛ちゃんの表情については至上さん
http://d.hatena.ne.jp/shijo/searchdiary?word=%2a%5b%a5%b3%a5%f3%a5%b5%a5%ec%a5%dd%5d
が書いていらっしゃいます。至上さんの仰るとおり「鬼気迫る」という言葉がふさわしい表情と歌い方でした。
僕は、あのメンバーの後ろにいた時の愛ちゃんの表情の意味がよく見えていないのが少しフラストレーションなんですが、
その表情に関係があるのかないのか、曲への気持ちの込め方が以前に比べてより深く、そして複雑になっているような気がしました。




その気持ちが強くなったのは『声』のパートを歌っている時の愛ちゃんです。その時の表情を見た時に僕の口から出た言葉は、
「その表情で歌うのか・・・」
正確に言うと「その表情で歌うことができるのか・・・」なんですが、つい2曲前で髪の毛の乱れも気にせずに歌をステージに
叩き付けていた人間と同一人物とはとても思えない、その微笑をたたえた表情。うつむく目線、そして上を見上げる目線。
その表情をなぞるように抑えぎみに歌う。フェイクも抑え気味で、でもアルバムにはなかった、ちょっとスキップするような
フェイクも前半部分に入れていたりして、この曲を自分の表現の枠内に入れてしまっている、といってもいいような気がします。




僕の貧弱な感性では、去年の秋のコンサートで枠内に入っていると思えた曲は『Memory青春の光』と『恋ING』ぐらいだったのが、
今回のコンサートではその数が多くなっているんです。例えば『LOVEマシーン』。
僕が苦手な曲調の曲です。この曲はおそらく楽しめないだろうな、と思っていました。
でも今回は愛ちゃんの鋭いダンスに強く引きこまれていきました。『独占欲』の時もだったんですが、ダンスにおいても愛ちゃんの
表現力は前回より確実に上がっているように感じました。『独占欲』の時は今までにない力強さを感じ、
『LOVEマシーン』の時は瞬間移動のように体をさばくキレとスピードに唖然としました。キレとスピードについては
コンサート全体を通して強く印象に残りました。
今回はそういう曲が多いんです。印象に残らない曲、というのが去年に比べて凄く少なくて、
それは僕自身が、苦手な「明るい歌」もしっかり聞こう、と決めたから、というのもあるとは思いますが、それを差し引いても、例えば
その明るい歌の時に浮かべる笑顔にしても、去年より曲の明るさを表情に込めることが出来ているような気がするんです。



笑顔についてはまた後で書きます。その前にこの曲の順番が来ているので。




『ふるさと』。




この曲についてどう書いたらいいのか散々悩みました。高橋愛のファンが、高橋愛のふるさとで、『ふるさと』を聞いて、
冷静でいられるはずなどありません。ここがこういい、とか、あそこがこういい、とか、考えている余裕は正直ありませんでした。
しかも僕はこの日が愛ちゃん『ふるさと』の初見です。
初見で、ふるさとで『ふるさと』を見て、
あの憂いと喜びを丁寧に編み上げていくような表情を見て、
DVDの時とは全く違うと言ってもいい、柔らかな優しい、それでいて緊張感を決して失わないその歌を聞いて、




歌い終わった後、すっとはにかんだ高橋愛を見て、




・・・もう書いてしまっているのでこのまま書きますが、立っているのがやっとでした。どの表情を見ても、Aメロを歌っていても
Bメロを歌っていても、なにか支えが欲しくて仕方がなかった。なんなんだろう?なんでこんなに引きずれ込まれるんだろう?
なんでこんなに目が離せないんだろう?目が離せないから、また上塗りするように素晴らしい表情を見なければいけなくなる。
そして、歌い終わった後にはにかんだ高橋愛を見なければいけなくなる。必死で立ち続けなければいけなくなる。







ただそれは、僕自身が求めていた表情そのものです。僕は今回、高橋愛の『笑顔』を見たかった。
『笑顔』で歌う高橋愛を感じてみたかった。柔らかな笑顔。はじけた笑顔。大好きな高橋愛の『笑顔』を見たいと願ったんです。
今回のセットリストには微笑をたたえながら歌う曲が何曲かあって、個人的にすごく入り込めるセットリストになっています。
だから後は、この曲の時の愛ちゃんの笑顔を感じたいんです。それが今回のツアーの僕の1つのテーマです。




『I WISH』




サビの部分。
「人生って素晴らしい ほら 誰かと 出会ったり 恋をしてみたり  〜  」
この時の笑顔を僕は感じたいんです。
この『I WISH』の歌詞は、いわゆるガンバレソングです。陳腐と思う方もいらっしゃるかと思います。
でも、高橋愛が歌うなら、信じてみようか、と思ったんです。
高橋愛が全力の笑顔でそう言ってくれるなら、その歌詞は真実になる。そう思ったんです。
だから僕は、ツアーを通してこの曲の愛ちゃんを見ていきたいな、と思っています。
いや、正確には、この曲を感じることの出来る自分を作り上げていきたいな、と思っています。





□     □     □




全ての曲が終わり、メンバー全員のMCが終わり、メンバーが舞台から消えてコンサートが終わった、とその時、
愛ちゃんが一人でステージに現れました。ただ一人で。特に誰かに急かされる様子も無く、なにか、ちょっと
忘れ物をしてしまったような気軽さで、テクテクとステージの中央に向かっていく。



ステージの中央に立つ。



心の中の全てのメーターが振り切れました。



もう表情とか表現とかどうでもよかった。一人だけ、ただ一人だけでステージに立つ。
一人だけで僕達に呼びかける。一人だけに声援を送ることができる。
何故だか『ふるさと』を歌っている時よりも、より、「一人だけの高橋愛」を感じてしまう。
一人だけの、一人だけの高橋愛
僕らに呼びかける。僕らが応える。そして帰る間際、最後に、いつものように腕で大きく円を描き、バレエダンサーのようなお辞儀をする。
ステージの中央でお辞儀をする。ただ一人で。
美しかった。本当に美しかった。




あんなに美しいプリマ・バレリーナは見た事が無かった。





□     □     □




コンサートが終わって数時間後、僕はとあるビルの前に立って、彼女が通っていたバレエ教室の窓を見上げていました。
強く降ったり止んだりと落ち着かない様子だった雪もその時にはゆっくりとしたテンポで静かに降りて来て、
傘を差していなかったから上を見上げると時々雪が顔に当たったりもするけど、そうやって窓を見上げながら、
あのステージでのお辞儀を、そしてコンサートを思い出していました。




今回のコンサートでの愛ちゃんを見て全体的に感じた事は、『躍動感』でしょうか。
それが『陰』の表現でも『陽』の表現でも今までにない深みを感じました。そして全力で自分の表現力を引き出そうという
気持ちが見えたような気がします。全曲を通して愛ちゃんを見たい、と思わせてくれるコンサートでした。




そして、あの教室で一生懸命レッスンをしていた女の子が、この日だけとはいえステージの真ん中に立っている。
あれだけの表現を生み出す女性に成長している。
この日は僕にいろんな感情を与えてくれた、また気づかせてくれた記念すべき日になりました。






おそらく、この日のコンサートは一生忘れないでしょう。
ビルの階段をあわてて駆け上がって行った、幼い日の誰かの残像と共に。