コンサートで高橋愛を見た感想を書きます。
昨日、大阪で行われたHello! Projectのコンサート。昼公演と夜公演に入りましたが、
書くのは夜公演の、その中の一曲についてだけです。




会場には左右にサブステージが、そしてアリーナの外周に沿ってセンターステージへとつながる道が作られていました。
サブステージのすぐ横からスタンド席が斜め上方へと上がっていきます。右サブステージ横のスタンド席は、ファミリー席です。
僕はそこの、前から5列目に座っていました。
今までで一番ステージから近い場所でした。サブステージ上の全てのメンバーの表情や身のこなしの全てが、
一切の注釈や但し書きを必要とせずに見える距離でした。
そして、この右ステージでエレジーズの『印象派 ルノアールのように』が歌われました。




□  『印象派 ルノアールのように』


まず感じたのが、高橋愛の周りを取り囲む空気の濃密感。そしてその空気が激しく振動する感覚でした。
空気の濃密感はダイナミックな動きとスピードの緩急から、
振動する感覚は細やかなディテールから発せられているような気がします。




サビの部分に入る前の腰のグラインド。上体は動かさずに腰から下だけをゆっくりと回していく。
地に足を付けているのにまるで浮遊しているかのような錯覚を起こす。
回している時に太ももの上に置いている両手も、ただそこに乗せているだけじゃない。
右手は、まず腰と同調するように小さく弧を描いて、左手よりも遅れて太ももに触れる。指は反らし気味にしている。
浮遊感が一層強調されて見える。
腰を回すにしたがって少しずつ右肩を上に向かって入れていく。
そして、サビに入る瞬間、絶妙のタイミングと物凄い早さで上げていた右肩を落として弾みをつけて、サビのダンスに入っていく。




動きと緩急と細やかなディテール。それを兼ね備えている、とは思っていたつもりで、わかっていたつもりでもいました。
でもそれを眼前で見せ付けられた時の衝撃は、喜びでもあり、そして自分に対する怒りでもありました。
見ていたつもりが、結局何にも見ていなかった。
動きも、緩急も、ディテールも、全てが確信に満ちているように感じました。
ダンスを間違えていない、とか、うまく踊れている、とか、そういう確信ではなくて、
ダンスを踊っている自分に対する確信です。
生きている事、その躍動感に満ちた確信です。




「ダンスが好き」




僕はこの言葉の意味と深さを、直接愛ちゃんから教えてもらったような気がします。
やはり僕は心のどこかで「可愛いお飾り」として高橋愛を見ていたろうと思います。
でも目の前にいるのは、生きている証しをステージに刻みつけようとしている一人の女性でした。




わかっていたつもりなんです。見ていたつもりだった。
でも見えていなかった。彼女には血が通っているという事が。
彼女の肌は、温かい。
そんな事すら見えていなかった。



□  □  □



『もっと遠くまで』
愛ちゃんはこちらとは反対側を向いて、この歌詞を歌いました。
歌声が響きました。僕はファミリー席なので座っていましたが、僕の体全体に力が入って、
でも首から上だけは、その歌声のせいで、まるで筋力と思考能力が失われたみたいに俯いていきました。




僕はこの部分が大好きなので、本当に聞けて良かったと思っています。
ただ、向こうを向いていたのでその時の表情は見えませんでした。どんな表情で歌っていたのか。
メインステージのモニターには移っていたのかもしれませんが、そちらを見ている余裕など全くありませんでした。
細かい話をすると、昼もかなりサブステージに近かったので、やはりモニターを見ている暇はありませんでした。




だから僕は、このコンサートで多くのものを得たと同時に、忘れ物もしてしまいました。
それも、高橋愛の表情という、とてもとても大事なものを忘れてしまいました。
今、名古屋に行こうかなと思っています。
最近カネナイ、カネナイ、と世知辛い事ばかり書いてますが、昼だけでも夜だけでもいいからコンサートに入って、
昨日の忘れ物を取りに行けないかな、と思っています。