何年ぶりか、何十年ぶりか。
紙飛行機を作りました。
夜明けに誰もいない公園まで足を運んで、そこで飛ばしました。




家から自転車で数分のところに、小高い山の斜面に作られた、
僕の住む街を見下ろすことのできる公園があります。
公園のベンチに腰かけて、持っていたノートを一枚、丁寧に破り取って、
昔よく作っていた頃の記憶を呼び起こして、たどたどしい手つきで、ごくシンプルな紙飛行機が出来上がりました。




立ち上がって、芝生が植えられていたり土が剥き出しになったりしている斜面まで行って、
見下ろす街の、その上に広がる空に向かって、スナップを効かせて放ちました。
紙飛行機は想像とは裏腹に風に乗って、浮いては落ちそうになったり、また舞い上がっては失速したり、
空に消えたかと思うと街並みを背景にしてあらわれたり。




紙飛行機は風に乗りながらも少しずつ高度を下げていって、斜面の下の、芝生で見えない位置に着陸しました。
着陸を見届けてから目を前に向けると、そこには紙飛行機のない街並みと空。





せめて気持ちだけは、この地を越えて彼方にまで。