ピアノソナタや、協奏曲、にはそれほど心を奪われた事ってないけど、ピアノの音色自体は昔からすごく好きでした。
激しく、早く、テクニカルに弾かれるよりも、ゆっくりと、訥々と、丁寧に、ぽっかりと広がった空間を少しずつ埋めていくような音の流れの方が好き。
だから、ピアノの伴奏はすごく好き。その音が響いている時も、響いていない時の空気も、すごく好き。
そして、ピアノの傍に立って歌っているのが高橋愛ならば、僕には、もう他に何も必要ありません。
そのシチュエーションが彼女の目指す未来とは必ずしも合致している訳ではないから、なおさら自分にとって大事な空間に思えてきます。
出来うるならば、その場に身を置いて、直接その空気に触れてみたかった。
それでも、歌い始める時にマイクを持つ左手の、ふわりと上下させて曲の中へ踏み込んでいこうとする中指と薬指を見ていると、自分の望む空間よりももっと見続けて行きたい『未来』があるんだ、という事を確信させられます。
そして、スケッチブックに「ふるさとを2人で唄いたいデス」と書かれた、その右上に描かれた『山』。
『あの町』から見えるあの『山』をいつまでも覚えていてくれるのなら、どれだけ遠くへ行ってしまっても決して離れてしまう訳ではないんだ。
そんなふうに心を揺らめかせながら、ずっと望んでいた「流れ星を見たら 何を祈ろうかな」の部分を聴いていました。