吉澤さんが声を詰まらせた。
こんこんへの卒業メッセージを送っている時だった。
「リーダーになりたてですごく悩んでいる時に、こんこんがメールをくれた」
そういう内容だったと思う。その言葉を言った後、吉澤さんは声を詰まらせた。
それを見た時、去年の秋の、仙台でのモーニング娘。コンサートを思い出した。
その日も吉澤さんは、ラストのMCで声を震わせていた。
「あの日」からいきなりリーダーになって、それからの日々、様々な出来事に思いを馳せて。
大変だった、という言葉では到底表現しきれないくらい、大変だったんだと思う。
自分の勝手な思い込みかもしれないけど、吉澤さんは、姉御肌ではあるけれど、「リーダー」というタイプではない、というイメージを持っている。
リーダーとなると、メンバーやその他いろいろな事に、細やかに気を使わなければいけなかったりもするんだと思う。練習時の怒り方1つにしても、我を捨てて怒鳴ったり、諭したりしなければいけない時もあるんじゃないだろうか。
確か6期が入った時のインタビューで「馴れ合いはしない」みたいな事を言っていたのを覚えている。別に今でも馴れ合ってる訳じゃない筈だけど、そういうサバッとした性格の人が、吉澤さん本人を含めて10人の物心両面を見つめていくのは、すごくパワーのいる事だったんじゃないかな、と思う。
『青空の10人』という言葉に自分の心が揺り動かされたのは、もしからしたら吉澤さんがリーダーだったからかもしれない。
あの日、確かに、空は一面に曇った。
その雲を、吉澤さんはリーダーとして必死に取り払い続けてきた。
雲から取り払われた空はいつもよりいっそう鮮やかな青色に見えて、
だから、その色が10人にふさわしい、と思えたのかもしれない。
その吉澤さんに、リーダーになった当初、こんこんはメールで言葉を渡していたのだとういう。
それをステージ上で言った吉澤さんは感謝の気持ちが溢れているように見えた。
暗中模索の中でもらったこんこんからのメールは、とても励みになったのではないかと思う。
それは、「赤点」と言われ、歌やダンスで、加入した当初決してストレートに適正に向いているとは言いきれない部分があった、それを必死で乗り越えてきたこんこんにしか発せない言葉なんじゃないだろうか。
こんこんにしか出せない温かさなのではないだろうか。
吉澤さんは昨日のステージで「こんこんは食べるの遅い。なんでたこ焼き4分割にすんだよ!」と、とても楽しいエピソードを聞かせてくれた。
こんこんはメールで、その4分割にしたうちのひとつを爪楊枝に差して、
吉澤さんに「どうぞ」と、あのおっとりした笑顔で差し出したのではないだろうか。